「着付け」と「着る」は違う

洋服は布を立体的に裁断縫製しているので、ファスナーを閉めたり、ボタンを留めたりするだけで、着る人のテクニックはほとんどいらずに体に添ってくれます。

着物は平面なので、立体の体に合わせるように折ったり畳んだりして紐で着付けます。中原淳一さんの本で読んだのですが、自らパタンナー・デザイナーとなって自分の体に着付けていくのです。折ったり畳んだりは洋服で言えばダーツをとっているのと同じこと。

着付けを習い始めてすぐの時には、ややこしい!めんどくさい!と思っていたいろんなテクニック。しかし、中原淳一さんの言葉を知ってからは、楽しめるようになりました。いろんなところを折ったり畳んだりするときに、着付けとはこうするものだと理由もわからずに漠然とするのと、ここでこうダーツをとればすっきりと体にフィットしていくのね、と理解しながらするのでは、仕上がりも変わってきました。慣れてきたというのもあるでしょうが。

着付けのひとつひとつの所作の理由がわかると、ずっと楽にきれいに着ることができるようになりました。楽に楽しく着物ライフを過ごすためには、良い着付けの先生に習うというのも大事なのかも。

ちなみに、私がなるほど!と思って守っている着付けの先生の教えは。

1、肌襦袢長襦袢→着物と常に余計な皺が出ないように注意。特に背中に皺が出ないように気をつける。下着からきれいにしておかないと上に着るものに影響が出て、後からでは直せない。上から重ねるものはふわりと、せっかくきれいに整えた下のラインを邪魔しないように。特に襟。

2、紐は後ろで交差するときにきゅっと締めて前では締め付けない。前で締め付けると苦しくなる。これは体の前と後ろを自分で手でぎゅっと押してみれば実感できます。

3、長襦袢が着あがったら余計な動きは極力抑える。→着崩れが防げる。→最初から帯の付属まですべて準備しておくこと。

4、どの動作も体の芯をまっすぐにして、ふらふらしない。腰を折り曲げない。しゃがむ時は膝から。→着崩れが防げる。複雑に布が重なっている上半身をいかにまっすぐに保つかが肝です。
(掃除機のホースに布を巻いて真ん中を結びます。結び目のところを曲げたら布がくしゃくしゃになりますよね。)

5、なにするときも左が上に来るように。(これだけで、帯揚の結びも帯締の結びも悩むことがなくなった)

6、帯は下が輪になるようにして、下を持って下をきゅっと締める。上はゆるくて良い。理由は二つ。下がしっかり絞まってないと、重力で下に落ちやすい。上が絞まっていると胃が苦しい。手で帯の上あたり(みぞおち)と下あたり(お臍)をぎゅっと押さえてみてください。苦しさが全然違います。お臍のところはかなり押さえても平気。

7、ひとつひとつの動作に時間がかかっても良いから、ゆっくりと落ち着いて一手で決める。やり直すと着崩れるし、かえって時間がかかる。

8、着崩れしないようにぎゅっと締めるポイントは腰紐と帯枕のガーゼ。あとはほどほどでOK。特にコーリンベルトはゴムが伸びない状態で留めるくらいゆるくて良い。意外にコーリンベルトの締めすぎで襟元の着崩れが起きます。いつのまにか半襟がほぼ見えなくなった経験、私だけでしょうか?

あれ、結構長くなりましたが、上記のことが理解できてからは、着付けがきれいと言われ、着物を着だして3ヶ月ということにびっくりされるようになりました。お世辞もたぶんに入っているとは思いますが。